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105月/19

海外技工物(made in china)日本に進出

海外技工物(中国製技工物)が日本に進出してきました。
今回はこの話題を取り上げますが、トピックスとしては、なにも目新しいことではなく
今から10年ほど前、小泉首相の時代に日本は構造改革ブームが沸き起こり、「古いしきたりや常識はもうこの時代に通用しない、新しい時代の新しいしきたりを作るんだ」と政治家の先生方が息巻いていた時代にさかのぼります。
旧来、日本では「みんなが安心して暮らせるため」という視点で国民を守るための制度が作られて来ました。ちょうど自動車でいえば車検制度や免許の書き換え時の試験や講習などがそれにあたります。
確かに免許の書き換えは「めんどう」で、いつも自動車を運転している方からすれば「不要なのでは」と思われるかもしれません。しかし、「いつもは車に乗らないけれど、1年に1度ぐらいは運転する」というかたも当然いらっしゃいます。視力だって落ちているかもしれません。そのときに、「以前は運転できたから大丈夫」だと思って運転したらどうでしょう?運転中に以前と勝手が違ってとっさの時に戸惑うことだってあるかもしれません。だから国民を守るという大義のある規制はあってしかるべきなのです。

その当時、構造改革の目玉にあげられたのが郵政民営化と医療改革でした。のちに国土交通省も巻き込んでの「タクシーと観光バスの新規参入自由化」も実施するわけですが、こちらは観光バス業界の料金値下げの過当競争を生み、運転手さんは繁忙期には数日間睡眠をとらないで運転をしなければ採算がとれないくらいまで競争激化してしまい、数年に1回の割合で高速道路での大変痛ましい事故が現在も起こる事態を生んでしまいました。
一方郵政はというと、皆様ご存知の事態が起きているのでここではあえて書きません。
その後、非正規雇用の自由化から終身雇用制度の崩壊が起こり、現在に至ります。
古い制度がすべて悪というわけではないのですが、「構造改革」と、「国民を守るための制度を破壊すること」をはき違えて突進してきてしまったというところに問題点があると思われます。
そして健康保険制度も国民に利用しずらい形にゆがめられてしまいました。

歯科医療では、皆様のお口の中に入れる金属修復物(技工物)は貴金属を使用します。当然歯科医療費の中で大きな割合を占めてきます。この(金属代+歯科技工士技術料)を大きく削ることができれば国の持ち出しが減るのではという目測のもと、海外技工物が解禁されてしまいました。ただし、制作してからセットまでの日数を考えると遠い国で作ったのでは時間がかかりすぎる。人件費も安い国で作りたい、そうして白羽の矢が立ったのが中国でした。
歯科金属は合金といって混ぜ物の金属を使って治療します、純粋な金属だけを使ったのでは莫大な金属代がかかるからです。
現在日本国内で流通している歯科金属には、成分表示が義務づけられており、医療承認を受けている金属のみ使用することができます。
海外技工の問題点は、管轄が通産省となっているため技工物は「雑貨」扱い、ちょうど100円ショップの玩具と同じ扱いで日本に入ってきている点です。(もちろん雑貨なので医療認証も不要、金属の捕捉も不可能)

当院では、国内の大手技工所と提携して国内技工物使用の推進を行っています。現在保険診療では九州の大手歯科技工所が主に制作にあたってくれています。(自由診療技工物は都内の技工所と提携しています)
限られた金額の中で、国内の技工士に適正な金額での発注を行っている関係で、技工物は配送センターでとりまとめ、決まった数になった時点で発注を行っています、そのほうが技工物としての精度を確保できるからです。(なので自分はせっかちなので早く作ってほしいというニーズには残念ながら対応できておりません)
中国産技工物を扱えばその浮いた差額で航空機での運搬もできるので、むしろ中国製技工物のほうが納期が早いという国内、海外逆転現象も起きていますが、当院では海外技工取り扱い予定はございません。
皆様に信頼の治療と技工物をお届けできるようにこれからも務めてまいりますので今後ともよろしくお願いいたします。