笑気麻酔 (吸入精神鎮静法) を実施しております

2018年7月より、厚生省施設基準認定歯科医院となりました。それに伴い、外来での治療設備の拡充、安全管理等を推し進めております。その第一段として、少し歯科は苦手だけれども治療を受けてみようと思っている患者様に対して精神鎮静法を併用した歯科治療を開始いたしました。

精神鎮静法というと聞きなれないと思いますが、以前の治療や経験が引き金となって歯科治療に恐怖心を持っている方でも、恐怖心が和らいだり、きもちが楽に治療できれば受診してもよいといわれる方も結構いらっしゃいます。歯が痛いけれども怖いから行けない、でも痛みが強い。どうにかならないのか?そんな場合、鼻から吸引する精神鎮静薬を利用することにより、応急処置程度の処置であれば通院できる可能性がある方は結構いらっしゃいます。本格的な治療までは望まないけれど、痛みだけでも取ってほしい。そのような場合に有効となる治療の選択肢の一つと言えます。

また、小児の患者様で、恐怖心が強い場合も同様に有効といえます。ただしひとつ大切なのが、笑気吸入鎮静法では麻酔深度(麻酔の効く強さ)は、どのような患者様に対しても安全であるべきというのが一番の条件になっておりますので、実際は少し頭がボーっとする程度で気持ちいいとか、手足がほてってくる程度に調節されております。痛覚が完全にブロックされることもありません、なので痛いことをされれば痛く感じます。このため、「歯科治療を受けたい」という「意思」のある患者様のみに有効な方法となっております。

(術中もご本人様は意識がありますし、術者とも意思の疎通を取ることができます。治療を受けたくないという「意思」のある場合、鎮静効果が十分に発揮されないばかりではなく、鼻マスク等が体に絡まる事故に発展する恐れがありますので使用は控えられたほうが良いと思われます。)

また、どんな方でもと書きましたが、妊婦の方、または妊娠の可能性のある方は、胎児に対して安全だという証明が取れないため使用しないほうが無難だと思われます(どんな場合でも、完全に胎児に安全な薬はない)また、鼻呼吸のできない方には利用できません。

笑気吸入鎮静法では、鼻マスクを装着し鼻からゆっくり息を吸い、口から息を吐くの動作を繰り返していただきます。通常3分ほどの呼吸で鎮静効果を発現します。(何の変化も起こらない場合、鼻から吸う動作がうまくできていないことが多いです)また、吸入をやめると約3分で体から排出されますので、鎮静法が心配な場合はいつでもすぐに元の状態に戻ることができます。

また、呼吸器、気道に対する刺激性や、静脈麻酔に多い呼吸抑制作用もありません。(麻酔で意識が戻らない等の事故は、呼吸抑制効果が作用している)循環系抑制効果、無し。(血圧をあげたり下げたりの悪さをしない)筋弛緩作用、無し。(筋弛緩による呼吸停止を誘発しない)肝臓、腎臓に対して機能障害なし(肺から吸引、排出するため薬を代謝する臓器に負担をかけない)

麻酔深度 (麻酔の効くつよさ)は、1期から4期までの4つのステージがあり、笑気鎮静法は一番軽い1期(無痛期)に相当します。通常外科手術で使う麻酔のステージは3期となります。1期は深い麻酔をかけるためのごく初歩のステージに分類され、麻酔効果でいえば意識もあり、ごく軽いものといえます。また吸入法を利用することにより速やかに体外に排出されることから安全な麻酔法と言えます。(分類では無痛期と書きますが痛みの感覚ははあり、処置には注射の麻酔を併用することもあります)