歯や顔の痛みについて、今回は三叉神経痛を取り上げましょう。三叉神経痛は、脳の三叉神経根部というところで、神経が血管とぶつかってしまい、そこの神経のいわば絶縁体がなくなってしまい、神経が異常興奮することで痛みが出ることがほとんどです。一般的には、高齢の女性に多いと言われています。顔を洗ったり、歯磨きをしたり、物をかんだりしたときなどに、数秒の激しい痛みが、顔の左右半分のどちらかに起こります。このような行動をトリガーポイントを刺激するといい、トリガーポイントは個々の患者さんで異なります。刺激が加わったときのみ痛みが出現するため、患者さんはトリガーポイントの部位の病気をついつい疑います。そして、歯科に来られる患者さんは主に、痛くてかめないなど、歯髄炎や義歯の不調が原因に違いないと歯科医に訴え、それらの処置を要求することも多く見受けられます。しかし、歯や義歯が原因ではないので、そのような治療を行っても痛みは治まりません。現在では、治療法は確立されてきており、第一選択はカルバマゼピンという抗てんかん薬が特効薬です。この薬で神経の異常興奮を防ぐことができます、しかし、眠気・ふらつき・肝機能障害などの副作用も多い薬ですので、慎重に使用します。根本的に改善したいのであれば、脳神経外科で減圧術という、ぶつかっている神経と血管を離してしまう手術があります。また、最近では、ガンマナイフを用いた治療法も用いられるようになってきました。最後に三叉神経痛と疑われたからには、必ずMRIを撮影することをお勧めしております。というのも、ぶつかっているのが血管ではなく脳腫瘍のことも少なからずあるからです。当院からは、東京医科歯科大学歯学部附属病院ペインクリニックへの紹介状もお出ししていますので、ご利用の際は申し付けてください。